塩化コバルト色変化  錯イオン 配位

 昔は乾燥剤と言えば、ブルーの粒で湿気を帯びるとピンク色に変わる物が主流でした。粒の素材はシリカゲルですが、色の変化にはコバルト錯イオンが関係しています。
「手 順」
[実験T]
  1. 塩化コバルト(U)六水和物の結晶薬さじ1杯(小)を試験管に入れ、弱い火であぶる。色の変化を観察した後、そのまま放置する。
  2. 試験管が十分に冷えたことを確認後、水約3mLを加える。
  3. ガラス棒に塩化コバルト水溶液をつけてろ紙に文字やイラストを描き、火であぶって色変化を見る。
  4. ろ紙をそのまま放置して、色の変化を観察したあと、また火であぶる作業を繰り返す。
  5. 試験管に残った塩化コバルト水溶液にピペットを使い、エタノール3mLをゆっくり加える。水層とエタノール層が混じらないように注意する。

[実験U]

  1. 塩化コバルト(U)六水和物の結晶薬さじ1杯(小)を試験管に入れて、水約3mLに溶解させる。
  2. 濃塩酸をピペットで少しずつ加えて変化を見る。

ガラス棒でろ紙に付けたあと火で軽くあぶる

ビーカーで色の比較:右に行くほど塩化物イオンの濃度が高い

動 画:塩化コバルト水溶液をろ紙に付けて火であぶる。
動 画:塩化コバルト水溶液に濃塩酸をゆっくり加えていく。
「実験上の工夫点」
  1. 実験Tでは、火であぶった結晶をろ紙に出して観察しても良い。
  2. 実験Uでは、はっきりと色変化が起こるまでかなりの濃塩酸が必要になるので、塩化コバルトは少なめにした方が良い。
「解 説」
 
遷移金属がつくる錯イオンは、配位種によって色を変えるものが少なくありません。結晶溶解により配位している分子が変わったり、錯体の構造が変化する場合もあります。また、塩の水分子が配位している場合もあれば、単なる結合水であることも。材料の塩化コバルト(U)水和物の場合、6個の水分子は、Co2+の配位水となって、正八面体構造を形成します。塩化物イオンは単にイオンの対として存在しているわけです。この結晶を加熱すると、配位水が失われ無水物となり青色を呈しますが、吸湿によってまたもとのピンク色にもどってしまいます。シリカゲル製の乾燥剤の色変化やコバルト紙はこれを利用したもの。最近は目にすることがなくなりましたが、簡易晴雨計として色の変わる飾り物「お天気ネコ」というものもありました。
 塩化コバルト6水和物は、[Co(H2O)6)]Cl2であり、
[Co(H2O)6)] 2+と2Cl-がイオン結合によって分子を形成しています。加熱による色変化は、配位していたH2Oが離脱することによります。
 水に溶解した際には、コバルトイオンは次のような錯イオンとなります。
    
   [Co(H2O)6)]Cl2  →  [Co(H2O)6)] 2+  + 2Cl- 
            ヘキサアクアコバルト(U)イオン(ピンク色)

 濃塩酸を加えることによる色変化は錯体の構造そのものが変わってしまうもので、形は4配位となる正四面体構造を取ります。
 
 [Co(H2O)6)] 2+ +4Cl- ←→ [CoCl4] 2- + 6H2O − Q
       テトラクロロコバルト(U)イオン(深青色)
 
 この反応は平衡を保っており、Cl-H2Oの濃度、温度によって移動します。特に、吸熱反応であるため加熱によって右への移動が色の変化により確認できます。[実験U]では、エタノールと水の界面で平衡が保たれ、深青色とピンク色の層が観察されます。

ヘキサアクアコバルト(U)イオン

テトラクロロコバルト(U)イオン