| つれづれ化学草子 炭の巻 | ||
| 炭持てわたるもいとつきづきし | ||
| 枕草子『春はあけぼの』清少納言 | ||
| 冬はつとめて 雪の降りたるは言うべきにもあらず 霜のいと白きも またさらでも いと寒きに 火など急ぎおこして 炭持てわたるも いとつきづきし 昼になりて ぬるくゆるびもていけば 火桶の火も白き灰がちになりてわろし 「訳」冬は早朝がよい。雪が降ったことはもちろん言うまでもないことですが。霜がおりて真っ白な様子も、また、そうではなくても、とても寒い朝は、炭火を急いで起こし、屋敷のあちこちに配ってまわるのも、いかにも冬の風情として似つかわしいことです。昼になって暖かくなると、火桶の火も白い灰が多くなって、もうみっともない。 |
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自然と人間への愛着と批判を展開した女流作家、清少納言の化学の眼を読み解いてみましょう。ここでは、炭と灰についての「つれづれ化学草子」です。 欠かせぬ燃料源だが着火に難点・・・平安時代が地球規模で低温の時期にあったことは広範な研究によって明らかになっています。その事実の一端は、貴族の着用していた十二単にも表れ、寒い時代にマッチした文化であったことを伺い知ることができます。そうした寒い時代の冬に、どのように暖をとるかは身分の貴賤を問わぬ大きな関心事でありました。炭は厳寒期に欠かせない燃料源でしたが、薪と比べ安全かつ扱いやすいため、大変重宝なものとされていたようです。 しかし、炭を着火させることはなかなか難儀であったようで、それは着火用アルコールや簡易着火器のある現在でも、しばしば体験することでもあります。ましてや火打ち石(放散虫が堆積してできた、チャートが主流といわれる)を使って着火させていた時代です。暖をとる事にはたくさんの人の協力が必要であったことでしょう。まあもっとも、寒い朝に炭火を起こして屋敷内をかけまわるのは、清少納言、彼女自身の仕事ではなかったのでしょうが・・・。 炭は燃えかすにあらず・・・炭は木を燃やして作られているかのように言われますが、なぜ燃料としてまた燃やすのに使われるのでしょうか?実は、炭は単なる木材の燃えかすではなく、蒸し焼きにして水分を抜き取り炭素分だけが残ったものなのです。木は主にセルロースがリグニンによって固められた作りをしていて、基本的に炭水化物Cm(H2O)nという組成になっています。有機物ですから、もし酸素が十分であれば、燃焼によって二酸化炭素CO2と水H2Oに分解され、残りは文字通り燃えかす(ミネラル分)になってしまいます。しかし、酸素を遮断して蒸し焼きにすると、水素と酸素分ばかりが抜け出て炭素分が残ることになります。材料の木の10−20%が炭として得られますが、重量の80−95%程度が炭素だと言われています。できあがった炭は、よけいなものが含まれていないので、生木のように煙も出ないし、何より大きなエネルギーが安定して得られることから、長い間有用な燃料源とされてきました。 |
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| 関連実験:松かさ炭になってカサカサ 炭化と炭作り 関連実験:すみに置けない墨流し |
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電極として・・・炭は炭素からなる導電体です。酸やアルカリ中でも安定しているため、乾電池の電極にも使用されています。子どもの頃、電池を分解したことがある人も多いのではないでしょうか。中に入っていたあの黒っぽい棒がそれです。炭素が電極として使用されている理由は、その導電性と安定性にあるわけですが、炭素を成分とする炭も優れた電極になり得ます。特に植物体を原料とする炭の場合は、蒸し焼きによってできた微細な空間に酸素を蓄積させることができます。したがって、陽極としてアルミホイル側から供給された電子を酸素に渡し、水酸化物イオンになるのを助ける働きをすることになります。式で表わすと、 O2+2H2O+4e−→4OH− 炭素電極に酸素分子が高濃度に存在すれば、それだけ電気が流れやすくなることがわかります。 関連実験:ただの炭ではすみません 関連実験:栄光のエコ電池 |
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また、灰は古くから洗濯の際にも使われており、特に、石鹸の誕生に関わる話が有名です。古代ローマ時代に、サポー(Sapo)の丘の神殿で、いけにえの羊を焼いて神に供える風習がありましたが、滴り落ちる羊の脂が木の灰にまじり、石けんのようなものが偶然にできたそうです。それが浸み込んだ土は、汚れを落とす不思議な土として大切にされ、サポー(Sapo)の丘が石けん(soap)の語源となったとか・・・。 |
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「参 考」 ・枕草子 (上坂信男、他 講談社) ・化学意表を突かれる身近な疑問 (日本化学会 講談社) |
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| 【編集・連絡先】埼玉県立坂戸高等学校化学教室 山田暢司 tel 049-281-3535 バナーご自由に: |
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